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院長ブログ

そのときどうする? 〜“もしも”に備える人生会議のススメ〜

2025/08/05

こんにちは、院長の小坂です。

今日はちょっと大事なテーマです。

みなさん、「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」、ご存じですか?

……って聞くと、

「なんだそれ、美味しいの?」とか

「パソコンの部品のこと?」とか返ってきそうですが、残念、違います。

ACPとは、日本語では「人生会議」と訳されていて、

将来、病気や事故で自分で意思表示ができなくなったときに備えて

「自分はどんな医療やケアを受けたいか」を、

あらかじめ話し合っておくという取り組みのことです。


● 家族が一番困るのは「わからないこと」

たとえば、ある日突然、あなたが倒れてしまい、

救急車で運ばれ、人工呼吸器が必要になったとします。

そのときに、医師が家族に聞くんです。

「延命治療をご希望ですか?」

「心肺蘇生(心臓マッサージや電気ショック)を行ってもよいですか?」

でも家族は「え? そんなこと、聞いてないよ…」とパニックに。

その場で「うーん……うーん……」と悩んだ挙句、

「やれることは全部やってください」と言ってしまい、

本人の希望とは違う方向に進んでしまうことが実際にあります。


● だからこそ、「人生会議」を!

私たち家庭医は、いつもこう思っています。

一番大事なのは、その人の“思い”」だと。

“長生きしたい”のも、“穏やかに最期を迎えたい”のも、全部OK。

ただし、どんな思いかを、ちゃんと共有しておいてほしいのです。

だからぜひ、次の健康診断のついでに、

いや、焼き鳥屋でビール片手にでもいいから

話してください。

「俺さぁ、もしものときは胃ろうはしたくないんだよね」

「ママ、もし意識がなくなったら、延命は希望する?」

そんな一言で、人生が変わるかもしれません。


● 「話すこと」が、最大のギフト

ACPの目的は、命を縮めることではなく、

「その人らしい生き方・最期」を大切にすることです。

そして、家族にとっても、

「お母さんはこう望んでたんだ」

と知っているだけで、心が少し楽になります。

私たち家庭医は、そういう「思いの橋渡し」が大好きです。

「ちょっと恥ずかしいけど話してみたい」

「紙に書いておきたい」

「家族とケンカにならないようにしたい」

そんなときは、遠慮なくクリニックで、または、訪問診療の診察の時にご相談してください。


最後に。

「終活」って言うと、

つい“遺影”とか“墓”とか“資産整理”が思い浮かびますが、

“これからの選択”も、大事な終活の一つです。

あなたの「思い」、未来のあなたのために、

そしてあなたを大切に思う人のために、

今、少しだけ考えてみませんか?

それではまた次回のブログで。

次は「在宅医療で実は便利な〇〇グッズ特集」でも書こうかな?

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