こんにちは、院長の小坂です。
今日はちょっと大事なテーマです。
みなさん、「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」、ご存じですか?
……って聞くと、
「なんだそれ、美味しいの?」とか
「パソコンの部品のこと?」とか返ってきそうですが、残念、違います。
ACPとは、日本語では「人生会議」と訳されていて、
将来、病気や事故で自分で意思表示ができなくなったときに備えて、
「自分はどんな医療やケアを受けたいか」を、
あらかじめ話し合っておくという取り組みのことです。
たとえば、ある日突然、あなたが倒れてしまい、
救急車で運ばれ、人工呼吸器が必要になったとします。
そのときに、医師が家族に聞くんです。
「延命治療をご希望ですか?」
「心肺蘇生(心臓マッサージや電気ショック)を行ってもよいですか?」
でも家族は「え? そんなこと、聞いてないよ…」とパニックに。
その場で「うーん……うーん……」と悩んだ挙句、
「やれることは全部やってください」と言ってしまい、
本人の希望とは違う方向に進んでしまうことが実際にあります。
私たち家庭医は、いつもこう思っています。
「一番大事なのは、その人の“思い”」だと。
“長生きしたい”のも、“穏やかに最期を迎えたい”のも、全部OK。
ただし、どんな思いかを、ちゃんと共有しておいてほしいのです。
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だからぜひ、次の健康診断のついでに、
いや、焼き鳥屋でビール片手にでもいいから、
話してください。
「俺さぁ、もしものときは胃ろうはしたくないんだよね」
「ママ、もし意識がなくなったら、延命は希望する?」
そんな一言で、人生が変わるかもしれません。
ACPの目的は、命を縮めることではなく、
「その人らしい生き方・最期」を大切にすることです。
そして、家族にとっても、
「お母さんはこう望んでたんだ」
と知っているだけで、心が少し楽になります。
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私たち家庭医は、そういう「思いの橋渡し」が大好きです。
「ちょっと恥ずかしいけど話してみたい」
「紙に書いておきたい」
「家族とケンカにならないようにしたい」
そんなときは、遠慮なくクリニックで、または、訪問診療の診察の時にご相談してください。
「終活」って言うと、
つい“遺影”とか“墓”とか“資産整理”が思い浮かびますが、
“これからの選択”も、大事な終活の一つです。
あなたの「思い」、未来のあなたのために、
そしてあなたを大切に思う人のために、
今、少しだけ考えてみませんか?
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それではまた次回のブログで。
次は「在宅医療で実は便利な〇〇グッズ特集」でも書こうかな?