突然ですが、みなさんは経済格差が健康格差につながることはご存知ですか?
簡単に言うと、お金持ちは寿命が長く、所得の低い人は寿命が短くなる傾向があると言うことです。
これは単純にイメージがつきやすいかもしれませんね。お金持ちほど自身の健康に気を使いやすく、そのためにお金を投じることができる。一方で低所得の人は健康に投資する余裕がなく、健康への興味が低い。しかも、タバコやお酒などの依存性のある嗜好品を好む傾向にあり、ジャンクフードをより頻繁に食べる傾向があると言う統計結果があります。
個人の問題で言うと上記の通りなのですが、超富裕層のアメリカ人が平均的な日本人よりも寿命が長いかというとそうではないのです。なぜでしょうか?それは社会全体の経済格差が寿命を短くすると言うことを示しています。多くの貧困層が富裕層の足を引っ張っている形をとるからです。
病院には低所得層の方が多く受診、入院することになります。いっぱいの病院には治療を早期に受ける必要があっても、そのために早期に治療を受けることができないと言うことが生じる。そのためにお金持ちでさえ治療が遅れ寿命が短くなるとも考えられています。
では、せっかくお金持ちになったのに低所得者のせいで寿命が短くなると言い切れるでしょうか?努力しない貧乏人が悪いと言い切れるのでしょうか?これには実は複雑な問題があります
「親ガチャ」と言う言葉が少し前に流行りましたが、これはおよそ真実を言い当てていると言えます。
出自の影響はとても大きいです。極端な例を挙げると虐待する両親だったとします。虐待されて育った子は自己肯定感が低く、努力しても報われないという教育を親から受けることになります。そのため、努力しても無駄、自分は能力の低い人間だと考えるようになり、精神疾患を発症しやすく、社会にもうまく適応できなくなりやすい傾向を持ちます。
その虐待する親はなぜ生まれたのでしょうか?関係するものとして社会からの孤立、貧困、教育の低さ、精神疾患の存在、アルコールを含む薬物依存などです。高学歴で裕福な家庭でも虐待は起こり得ますが上記の要因に比べたら発生頻度は低くなります。
虐待親でなくても、貧困家庭では親の自己肯定感、自己効力感が低く、どうせ自分たちの子は大した能力がないとあきらめ、全く期待せず、子供への教育投資をしない、する余裕がなくなることも考えられます。
こうして貧困の連鎖が生じ、子々孫々と貧困が受け継がれていきます。
では、どうすれば格差を少なくし、みんなで豊かになることができるでしょうか?
少なくとも必要と考えられることは全ての子供達への安全で心休まる家と十分な食事。そして、教育です。
7歳までにたくさん話しかけて、言葉の能力をみんなで高めてあげましょう。
学校教育について来られない子供達にはしっかり、周りの大人やお友達がサポートしてあげる必要があります。
学費が理由で高等教育を受けられない、大学に進学できないなどがないようにすることが重要ではないかと考えます。
両親が社会から孤立しないように、ご近所さんで声をかけ合いましょう。
貧しい親がいれば社会的なサポートを受けられるように助言など手助けしてあげましょう。
すべての人が十分な教育を受け、自己肯定感、自己効力感が高く、ほとんどの他人を信頼できる状態であれば、経済基盤がもっと成長すると考えられます。そして社会全体が豊かになるでしょう。それは優しさがもたらしたと言えると思います。
ちょっとだけ”おせっかい”なくらいが丁度いいのかもしれません。
格差をへらし、みんなで豊かになるには人に優しい社会をみんなで目指しましょう。
参考図書
イチロー・カワチ, 『命の格差は止められるかーハーバード日本人教授の、世界が注目する授業』 小学館新書
近藤克則, 『健康格差への処方箋』医学書院
前回、訪問診療で何ができるのかについて書きましたが、実際に訪問診療をはじめるにはどのような流れになるのかご説明したいと思います。
①今、通っているクリニックや病院に通院が難しくなってきた。あるいは特に病気はないが高齢でいつ自宅で亡くなっていてもおかしくない状態になってきたので訪問診療が必要になってきた。
②当院へ訪問診療を直接、電話(078−591-8070)で依頼する。
または、ケアマネジャーやあんしんすこやかセンターに相談して訪問診療をしているクリニックを紹介してもらい、訪問診療可能かどうか問い合わせてもらう。ご入院中の場合や病院に通院中の方は地域連携室に相談して訪問診療可能なクリニックを探してもらう。そこから訪問診療可能か問い合わせてもらう。
③面談の予約をする。(ご家族の方にご来院いただくか、ご家族もご来院が難しい場合は初回の訪問診療を兼ねてご自宅で面談を行うことも可能です。)
④他院に通院中の場合は診療情報提供書を作成してもらう。(なくても訪問診療は可能ですが、ある方がよりスムーズに病状を把握することができます。)
⑤面談をする。
面談では現在の病状についてやご自宅の状況、事務的な確認と説明をします。訪問診療を開始することになった場合、契約書や同意書が必要なため、それらの書類にご署名していただきます。または持ち帰っていただいて、次回の訪問時に書類をお預かりします。
⑥初回、訪問診療当日
医師がご自宅にお伺いし訪問診療開始となります。24時間365日電話対応し、必要であれば往診*を行います。
*往診は患者さんの求めに応じて臨時で患者さんのご自宅にお伺いして診察すること。訪問診療はあらかじめ計画を立てて、訪問日を決めて診察をすることです。
通院が難しくなった患者さんのお宅に医師が訪問して診察を行う訪問診療というものがあります。この訪問診療では何ができるのでしょうか?
まず、訪問診療では一般的な診察を行います。お話を聴いて、聴診器をあてる、皮膚に床ずれはないかなどの体の診察をします。そして、必要なお薬を処方します。これが一般的な安定している患者さんの診察の流れになります。
そして、必要であれば検査を行います。
可能な検査は血液検査、尿検査、簡単な超音波検査、心電図検査、各種細菌培養検査が可能です。医療機関によっては在宅でX線検査ができるところもあります。
処置をすることもあります。例えば、
床ずれの治癒促進目的、感染の原因となりそうな血流の悪い組織を取り除くデブリドメントという処置。
切り傷、裂けた傷などの縫合。
抗菌薬の点滴での投与や脱水や栄養を補うための点滴。
麻薬の持続点滴。
人工呼吸器をつけている患者さんの気管カニューレの交換。
膀胱に留置してあるカテーテルの交換。
腹水穿刺。
膝・肩関節注射。
何らかの原因で分厚くなってしまった爪の爪切り。などです。
輸血も行っているところもありますが、当院では輸血中、ずっと観察しておいてもらえる訪問看護師がいないためできないです。
そのほかにできることは、
人工呼吸器の管理、非侵襲的陽圧換気(NIPPV)、在宅酸素などの管理、中心静脈栄養の管理、胃ろう・経鼻経管栄養管理などが可能です。
では、できないことは?
クリニックの外来や病院でできて、当院の訪問診療でできないことは以下のようなことになります。
検査
X線検査(レントゲン検査)、詳細な超音波検査、CT、MRI、シンチグラム、筋電図、脳波検査
処置
全身麻酔、腰椎麻酔、指先以外の神経麻酔を要するような手術
バンパー式胃ろうカテーテルの交換。
輸血療法。
血液透析、腹膜透析。
骨折の整復。など。
になります。さらに詳しいことをお知りになりたい方は直接クリニックまでお問い合わせください。